昭和大学助教 小池佑果先生 ~瘀血と漢方~
当社コンソーシアムに参画して頂いている昭和大学助教 小池佑果先生に
インタビューをさせていただきました。
小池先生が研究テーマにされているのは瘀血(おけつ)です。
これは、血液の流れが滞ることで引き起こされる様々な症状のことを指します。
(例.打ち身、肩こり、生理不順etc.)
漢方薬は西洋医学の薬とは違い、緩やかに効いていく印象があるのですがいかがでしょうか。
多分それは、その時の状態が合ってないんだと思います。合っていればピシャっと効きます。
先日、漢方薬局に行って漢方薬を処方してもらったのですが、ちょうど生理初日で生理痛を訴えたら、「生理痛はないのが当たり前」と言われました。
生理痛はないのが当たり前です。生理初日は生理痛があるのが当たり前と思っている方は多いですよね。でも、私自身も生理痛があるので、「生理痛は無いのが当たり前」ではない、ということも分かりますよ。
周りの友人を見ても、比較的多数の女性が生理痛を抱えているように思うのですが。
大なり小なりあるのではないでしょうか。漢方ではその状態のことを証(しょう)というのですが、証を見て判断するというんですね。その人の今の状態を意味する言葉なんですけど、それがお薬とあっていれば、ピシャっと効きますね。これは体感してみないと分からないと思います。ものすごく肩が凝っているときに葛根湯を飲むと、30分くらいでスッと消えますよ。葛根湯は大体、風邪の時の処方ですので皆さん飲まないですが。
学生時代はどんな生徒でしたか?
勉強はしていましたが、一番後ろの席でよく寝てた気がします(笑)
研究者への道を志すきっかけは?
大学1年生の時から、漠然と研究者になりたいと思っていましたが、大学を卒業して一度、食品や化粧品分野に使われる植物の有用成分を作る会社に入社しました。もともと薬学部出身ですので、こうした薬の分野に戻りたいなと思って戻りました。
これまでの研究生活の中で一番大変だったご経験を教えてください。
大学院生の時が大変でした。研究の方法がわからなくて。研究結果も自ずと出なかったので、自分が研究に向いてないのだろうか、と思って辛かった。社会人になってからはあまりないですね。
研究結果が出ないということはどういうことでしょうか。思い通りの結果が出なかったということでしょうか。
そうですね。私が大学院の時にやっていた研究というのは、ある植物から何か成分を取ってきて、何か新しいものを見つけようというのがベースだったんですけど、新しいものを見つける前に、成分がとれないんですよ。学生なので手技自体も不慣れだったこともありまして。新しいものを見つけることが出来ないということに絶望した感じですね。
指導してくださる先生がされたら成分が取れるということですか?
そうですね。目の前で先生がやるとできるんですね・・・って。
そのあと分析をするんですよ。化合物自体がどんな構造をとっているかって新しいものなので分かんないんですよ。なので色んな分析器を使って構造を決めていくんですけど、それも難しくて。
すごいですね。まだ決まっていないものを決めていくんですよね。
そうですね。似たような構造のものとかとデータを見比べて、ここは一致しているからここの部分はこういう構造だねって部分的にパズルのようにやっていくんですよ。そうすると結果的に一つのものが作り上げられるんです。不思議ですよね。ピタってハマると面白いですよ。達成感があります。
逆に一番の喜びを感じたご経験を教えてください。
喜びは(研究)結果が出たときですね。大学院の時に新しい化合物を見つけて構造決定をしたのが一番ですかね。その時見つけた化合物がAdenofora A~E(合計5個)。沙参(しゃじん)という生薬に含まれている化合物です。
中国語のような響きですね。
そうですね、日本ではあまり使わないですね。沙参の中に含まれる成分を探索するというのが大学院の時のテーマでした。
コンソーシアムに賛同された理由は何だったのでしょうか。
あっとの社員の方から、「みんなそれぞれいいものを持っているんですけど繋がらないので、そこを繋げてもっと良いものを作りたいんですよね」ってお話を頂いたので、それが面白そうだと思ったのが一番ですね。
コンソーシアムでの研究テーマが「成人女性の瘀血スコアと毛細血管性状の関連性を評価する臨床試験」ということですが、もう少し詳しく内容を教えていただけますでしょうか。
成人女性の人に集まっていただいて、瘀血スコアというのがあるんですけど、その瘀血の状態がどれくらいかというのを判断するんですね。そのスコアが高ければ高いほど瘀血の状態が高いということになるんですけど、それと指先の毛細血管形状が関係しているのではないかということで、あっとさんの毛細血管スコープ(血管美人)を使って調べようという研究です。
研究規模としてはどの程度で考えられているのでしょうか。
30名です。成人女性という大きなくくりで、閉経していない女性、20~50歳くらい。
それは、誰のどんな役に立つための研究になるのでしょうか?
瘀血は血にかかわる病態なので、やはり女性の方に影響しやすい病態になるんですね。私が想像しているのは、若い世代に対しては生理(生理痛があるとか)、40~50代の方では閉経を迎えて更年期障害が起きてくるので、そういったちょっと我慢すれば平気なんだけど、でもなくなればもっと楽になるもの、そういったものを取り除くことができればきっと、女性はもっと社会に進出したり、自分の好きなことをしたり、自由になれると思うんです。そのサポートがしたくて。そこが今、一番のモチベーションですね。ゆくゆくは自分にかかわるところでもあるので。国の方針としても女性役員の採用を何%以上にするだとか、国の流れも変わってはきているので、そういった人たちを応援したいというのが私の一番のテーマですね。
大学の時に成分の研究をされていたと伺いましたが、そこから今回の研究テーマに結びついたということなのでしょうか。
それは正直なところ関係なく、今のテーマに行き着いたのは、もう亡くなられてしまった先代の教授がもともと持ってらっしゃったテーマで、昭和大学に赴任した時に「やってごらん」と言っていただいたんです。鳥居塚先生という男性の先生ですが、女性に関するテーマが多かったです。漢方の業界では有名な先生です。
初めてこのテーマをお聞きになった時、どんな印象を受けられましたか?
女性にかかわるものなのでやってみたいなと、面白いだろうなと思っていました。そしてハマっていきました。結局自分に返ってくるので(笑)。当時から鳥居塚先生は、「女性の方がやっぱり優れている生き物だから」とずっとおっしゃっていました。私が学生の頃の教授なんですけど、戻ってきてからも先生だったんですよ。「女性が生き生きしてくれている方が、僕たち男性にとっても幸せだから女性のための研究をしたい」とおっしゃっていました。
偉大な先生でした。漢方の教科書をよく作られていて、色んなコラムも書かれていました。
今後の研究の構想とコンソーシアム(当社)に期待していることを教えていただけますか。
これまでお話ししていたような、女性に使われている漢方のエビデンスを構築したいというのが一番の想いです。その分析の一部として血管美人が使えたら良いと考えています。コンソーシアムへの期待としては、参加されている先生が色んな分野にまたがっていらっしゃるので、うまく社会の流れというか、そういったものが作れればいいなと思いますね。
最後に、研究テーマにも関係のある成人女性に対して、伝えたいこと、知ってほしいことがあればメッセージをお願いします。
女性にとって、ちょっと我慢できることとか、少しの体調不良というのは、実は漢方で治すことができるということを知っていただきたいと思います。生理痛の微妙な胸の張りだったり、更年期障害のイライラとか、そういったことは実は漢方が得意とする分野です。「皆さん、治らないと思わないで、治るものですよ」ということを分かってもらえたら嬉しいですね。
(小池先生のプロフィール)
出身地:東京都
出身校:昭和大学
性格:好奇心旺盛
趣味:フラワーアレンジメント歴8年、映画、海外ドラマ、美味しいもの食べること
学生時代の部活:軟式テニス、料理同好会
好きなスポーツ:ウォーキング
インタビュー・ライティング by 千歳頼子(あっと 広報)
あっと株式会社:https://kekkan-bijin.jp/
毛細血管ラボ(大阪大学微生物病研究所 高倉教授監修):http://lab.kekkan-bijin.jp/